認知症心理検査講習会

日時
2017年7月28日(金)12:30 ~ 17:45
受付開始
12:00 ~
開催場所
東京医科歯科大学1号館(湯島キャンパス) 9F 臨床講義室 キャンパスマップ
内容

第1部 失語症検査

司会:本村 暁

  1. WAB 失語症検査の概要
    12:30~13:00 武田克彦
  2. WAB 失語症検査の実習
    13:00~14:30 武田克彦、本村 暁 他

第2部 認知症の最近の話題 軽度行動障害

司会:杉下守弘

14:40~15:10 旭中央病院 唐澤秀治

第3部 認知症心理検査

司会:福山秀直

  1. 老年期うつ検査ー15―日本版(GDS-15-J)の意義
    15:20~15:50 杉下守弘、朝田 隆
  2. ADAS-COG-J の認定
    16:00~17:40 杉下守弘、林 洋一、小池 敦、竹内具子

認知症検査講習会のまとめ

朝田 隆

17:40~17:45

参加方法
お問い合わせ、及び参加のお申し込みは、下記のアドレスにメールにてご連絡ください。
担当:いわき明星大学 林 洋一
メールアドレス:cns2017test@gmail.com
参加費

参加費は、下記の通りです。認知神経科学会会員の方と非会員の方、また、プログラム全体に参加する方と前半のみ・後半のみ参加される方で費用が異なりますので、ご注意ください。なお、参加費は、当日会場にてお支払いください。資料は、当日配布いたします。

会員非会員
第1部+第2部3,000円4,000円
第2部+第3部3,000円4,000円
第1部+第2部+第3部4,000円6,000円
発表要旨

第1部

WAB 失語症検査 武田克彦

失語症の検査が備えるべき条件としては、1.障害をうけている可能性のあるすべての言語側面を検査できること、2.臨床上意味のあるさまざまな失語症のタイプを判別できる下位検査を用いること、3.重症度を調べるため、困難度の段階をもつ検査項目を含んでいること、4.日による成績の変動や検査による変動を避けうるだけの十分な数の項目を含んでいる、5.実施に要する時間が十分実用的であることなどが挙げられよう。事実これらを考慮されてWAB 失語症検査が作成されている。この検査には、発話の記載(流暢性の判定を含む)、聴覚的理解、呼称、復唱、読みの障害、書字の障害などに加えて、ジェスチャーの行為など言語以外の認知機能についても調べる項目がある。我が国の臨床現場では、標準失語症検査がよく用いられているが、その検査とこのWAB 失語症の検査の違いについても触れながら、このWAB 失語症検査の特徴を説明したい。

第2部

認知症の最近の話題 軽度行動障害(MBI) 総合病院国保旭中央病院 脳神経外科 唐澤秀治

The Alzheimer's Association International Conference 2016(AAIC2016)において、IsmailはMild behavioral impairment; MBI(軽度行動障害)という概念を提唱し、MBIは軽度認知障害(MCI)・アルツハイマー型認知症(AD)の前触れであるという発表を行った。また、MBIを診断するためのチェックリスト(MBI-C)を公表した。MBIは、50歳以上の高齢者で、精神神経症状(NPS)が新たに出現し、少なくとも6か月以上継続した場合に定義され、次の5つの領域を軸としている:関心の領域、気分の領域、衝動制御の領域、社会的適切性の領域、思考・感覚の領域。MBI-Cを活用することにより、従来のMCIよりもさらに前段階であるMBIが診断できることになる。これにより神経変性疾患の検査のパラダイムシフトが起こる可能性がある。

従来、認知症の早期発見のためにBPSDに重きを置くという考えはなかった。認知症の早期発見のために記憶障害だけに重きをおくのではなく、NPSの有無に注意を払う必要はある。本講演では、加齢による物忘れ(ARF)におけるNPSの割合について、初診の段階で問診票を活用してMBIをスクリーニングする方法について述べる。

第3部

1. 老年期うつ検査ー15―日本版(GDS-15-J)の意義 杉下守弘、朝田 隆

「うつ」は精神疾患のなかで患者数が多いものの1つである。うつの中で「老年期のうつ」は二つの特徴がある。ひとつは、老年期になると認知症にかかる人が多いことである。したがって、老年期うつの検査は認知症の患者のうつを検出できることが望ましい。もう、ひとつは、老年期になるといろいろな身体的な疾患に罹ることが多いことである。したがって、老年期うつの検査は認知症や身体的な病気にかかっているか否かにかかわらず、使用可能であることが望ましい。

GDS-15(Sheikh and Yesavage,1986)はこれら2つの要請を満たしている検査と考えられている。具体的にいうと、GDS-15は短い文からなる15の検査項目しかなく、しかもYes/Noで答えればよいので、軽度および中等度の認知症患者にも使用でき、認知症患者のうつを検出できるといわれている。また、検査項目に健康問題に重点が置かれている項目がないので、身体的な病気にかかっているか否かにかかわらず、使用可能であると考えられている。

GDS-15が発表された1986年から現在に至るまでに、GDS-15の日本語版は10指に近い数のものが作成され、使用されてきた。これらの日本語版があるのに、新たに日本版 GDS-15-J( 老年期うつ尺度15― 日本版)を作成したのは、1.正確な翻訳、2.日本文化への適応、3.新たな標準化のため多数のデータを集積し、妥当性、信頼性などを出すという3つの点を検討すると従来の日本版は不十分であると考えたからである。新たに作成された日本版であるGDS-15-J(老年期うつ尺度15― 日本版)は2008年に杉下 守弘、朝田 隆によって作成された(杉下、朝田2008)。その後、2011年から杉下和行を中心に統計は逸見功が担当して、DSM-Ⅳと関連づけた妥当性の検討、内部一貫法による信頼性の検討などの標準化を行った(Sugishita, Sugishita,Asada& Henmi,in press)。妥当性については、ROC解析を行い、最適なカットオフ値として6/7を得た。最適なカットオフ値6/7の感度は.981であり、特異度は.855でいずれも非常に高かったので、妥当性は非常に高いといえる。因子分析をしたところ、3因子が得られ、いずれもうつに合致する因子で、構成概念妥当性も高かった。信頼性については内部一貫法によって検討したところ高い信頼性が得られた。妥当性、信頼性ともによい結果が得られたので、このたび、GDS-15-Jを新興医学出版社から公刊することにした。

2. ADAS-COG-J の認定 杉下守弘、林 洋一、小池 敦、竹内具子

認知症のスクリーニング、あるいは認知症患者に対する治療効果を測定する目的で、各種の心理検査が用いられている。そのような検査の中で最も広く使用されているものの一つが、ADAS-COG である。心理検査はともすると安易に使われやすいが、検査を実施するためには検査者が正しく検査を行い、その結果を正確に解釈する必要がある。ADAS-COG の検査者は、研究によっては「資格認定試験」に合格することが義務づけられている。本講習会では、米国と同じ試験問題を用いて資格認定を行う。なお、試験は平易であり、95%以上の受験者が合格している。

この講習会は、9回目を迎えた。今年も第7 回同様ADAS-COG の改訂新版を用いて講習を行うことにする。以前に旧版で本講習会を受講された方も、ぜひ、再度講習を受けていただきたい。改訂は、内容の変更だけではなく、前回のバージョンでは一体になっていた検査問題とマニュアルを分離し、判定基準を見直している。また、検査マニュアルはカラー化され、より見やすくなるように工夫されている。
*「ADAS-COG-J の認定」講習会の参加資格についてADAS-COG-J の認定講習会を受講できるのは、医師、心理士(心理系大学学部卒業者)、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士とします。その他の職種では、認定心理士の受験資格を有する方を対象とします。(講習会参加者に資格制限を設けているのは、原著者の意向によるものです。その旨、どうぞご了承ください。なお、ご不明の点がございましたら、下記までお問い合わせください。

担当: いわき明星大学 林 洋一
メールアドレス:cns2017test@gmail.com