開催にあたり

第24回認知神経科学会学術集会は7月13日、14日の二日間開催されます。テーマ「認知機能の発達神経科学と高次脳機能障害学のマリアージュ」にふさわしい学びの場になるように、関係者一同、鋭意、準備を整えて、皆様のご参加をお待ちしております。

今回の学術集会では、小児から成人また高齢者までの認知機能に関わる臨床と研究について、さまざまな視点からあらためて討論できるように構成を工夫いたしました。出生前に起源をもち、認知機能に特徴的な偏りを示す自閉症の謎に迫ること、高次脳機能障害の嚆矢とも言える失語・失行・失認の基礎から臨床までの経験を科学していくこと、高齢者の認知機能障害の典型とも言えるアルツハイマー病を中心とする認知症の基礎、臨床の最前線の知識を共有すること、が本集会の目的です。会場内外で是非ともそれぞれのご経験を語り合い、議論を交わし、成果をあげられる機会にして欲しいと願っています。ご自身の専門領域はもちろん、近接領域の学びも深めて、認知機能の不思議に出会う時間と空間を共有いただければ幸いです。

企画プログラムとして、ロンドン大学から千住淳先生をお迎えし、長年の自閉症研究の成果である「社会脳の発達と可塑性」について招待講演をお願いしております。画像研究で著名な松田博史先生には「認知症の脳機能障害と画像診断学の進歩」を、視覚認知機能の神経生理学的研究の泰斗である飛松省三先生には「脳を診る: 並列的視覚情報処理の基礎と疾患への応用」をそれぞれご講演いただきます。特別セミナーには「アルツハイマー病の遺伝子治療の可能性」として神経科学の第一人者である岡澤均先生から、治療法の展望についてお話を頂戴します。

教育講演には、情動の認知機能に関わるご研究について梅田聡先生から「感情を生み出す脳と身体の相互作用」を、高次脳機能障害臨床に精通された本村暁先生から、基本のキである失語症について「日常診療のなかで失語症状を診る意味」を、また水口雅先生から結節性硬化症の治療薬ラパマイシンの標的分子として注目される「mTOR 系神経伝達と知的機能の関連」を、お話いただきます。

シンポジウムでは「環境が変える・環境で変わる発達障害の認知機能: ミクロからマクロのエビデンス」をテーマに、4名の講師をお招きしました。中枢神経系機能の特異性を示す発達障害と環境との関係性について幅広い視点からの解明を目指して研究していらっしゃる先生方による最先端の成果をご紹介いただきます。

一般演題15題はひとつの会場でゆっくり聴いていただき、活発なご議論を是非お願いいたします。

日本教育会館は地下鉄神保町駅近くです。皇居間近の静かなエリアにあり、お堀端の散策やランニング、国立近代美術館やJR東京駅探訪、古書店巡りなどへの誘惑を感じる方も多いのではないでしょうか。学術集会の合間に、あるいは翌日(海の日)に楽しんでいただいてもよいのではと存じます。

認知神経科学に関わる老若男女すべてのみなさまのご参加を、こころからお待ちしております。

令和元年5月吉日
第24回認知神経科学会学術集会
会長 加我 牧子
副会長 稲垣 真澄