朝田 隆(お茶の水メモリークリニック)
司会:林 洋一
司会:杉下守弘
林 洋一(いわき明星大学)
参加費は、下記の通りです。認知神経科学会会員の方と非会員の方、また、プログラム全体に参加する方と前半のみ・後半のみ参加される方で費用が異なりますので、ご注意ください。なお、参加費は、当日会場にてお支払いください。資料は、当日配布いたします。
会員 | 非会員 | |
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第1部+第2部 | 3,000円 | 4,000円 |
第1部のみ | 1,500円 | 1,500円 |
第2部のみ | 2,000円 | 2,000円 |
1. 認知症の診断基準 -DSM-5を中心に- 須藤慎治(国立病院機構宇多野病院神経内科)
認知症の代表的な診断基準として、世界保健機関による国際疾病分類(ICD)、米国精神医学会による精神疾患の診断・統計マニュアル (DSM)、さらにアルツハイマー病の場合には米国国立老化研究所 (NIA)とアルツハイマー病協会 (AA)によるNIA-AAの診断基準などがある。その中でも国際的に広く用いられているDSMは前版のDSM-IVから19年ぶりに改訂されたDSM-5が2013年に公開された。DSM-IVからの変更点として、神経認知障害群(Neurocognitive disorder)の用語が導入され、そのカテゴリーの中に認知症(Major neurocognitive disorder)に加えてDSM-IVではなかった軽度認知障害 (Mild neurocognitive disorder)が新たに記載された。障害される認知機能領域として従来の失行、失認などに代わり「複雑性注意」「実行機能」「学習と記憶」「言語」「知覚-運動」「社会的認知」の6領域が分類された。認知症全般の診断にDSM-IVでは必須だった記憶障害はDSM-5においては必須ではなくなった。ただし、アルツハイマー病の場合は「確実なアルツハイマー病による認知症」「疑いのあるアルツハイマー病による軽度認知障害」を臨床症状のみから診断する際には記憶、学習の低下を認める必要がある。実臨床での認知症の診断における神経心理検査の位置づけや留意点も含め、DSM-5を中心に論じたい。
2. 認知症におけるDSM-5と神経心理学的検査 杉下守弘(王子こころのクリニック)
DSM-5の認知症に関係のある部分では、認知症の診断に神経心理学的検査がどのようにかかわるのかについて記載されている。しかし、認知症の診断に神経心理学的検査結果が必要なのか必要でないのかはっきりしない。日本語訳では、認知症の診断基準Aで、有意な認知低下があるという証拠が2種類の証拠に基づいている必要があるという。2種類の証拠とは、一つは本人、本人を知る情報提供者又は臨床家による「有意な認知機能低下があったという懸念」であるという。もうひとつは、標準化された神経心理学的検査に記録された臨床的評価であるという。
ところが、後者の証拠は入手が可能であれば、入手するが、入手が可能でなければ入手しなくてもよいということになっているようである。これは本当なのかどうかという問題などについて論じたい。
また、DSM-5には神経心理学的検査とはどんな検査を指すのかはっきり記載していない。具体的にどのような検査が使用されているか、どの検査が認知症に鋭敏か、認知症に鋭敏な下位検査はどれか、構成得点とは何かなどについて言及したい。
1. ADAS-COG-J の解説 林 洋一(いわき明星大学教養学部)、米田孝一(鹿児島大学法文学部)
認知症における問題行動は、中核症状としての記憶障害の他に、ADLの障害、様々な行動を遂行する機能の障害(意志、計画立案、目的のある行動、効果的行動)等として現れる。通常は、身近にいる家族や勤務先の同僚、近隣の知人・友人などによって「何かおかしい」、「以前と行動が異なる」という違和感によって気付かれることが多いが、本人が自らの行動を正当化、合理化するために、加齢による単なる物忘れと思われてしまうことが少なくない。
認知症心理検査は、認知症のスクリーニング・テストとして用いられることが多いが、他の重要な用途は治験における治療効果の判定である。この場合に用いられる心理検査は、信頼性・妥当性が高く、標準化が行われているのは当然として、繰り返して使用(測定)できる必要がある。また、外国で作成された心理検査では原版に忠実・正確に翻訳されているのと同時に、それぞれの言語の特徴や、社会・文化的背景を考慮して作られている必要がある。
ADAS-COGは、このような条件を満たしている心理検査である。この検査は、Mohsら(1983)によって認知機能を測定するために開発されたものであるが、その後に原版の改訂があり、また既存の日本版(ADASJ-cog)も存在するが、ここでは最新のADAS-COG-Jについて解説する。
2. ADAS-COG-J の認定試験 杉下守弘、林 洋一、米田孝一、竹内具子
認知症患者に薬物をはじめ種々の治療を行ったとき、その効果を測定する目的で各種の心理検査が用いられている。そのような検査の中で最も広く使用されているのが、ADAS-COGと言えるだろう。
心理検査を実施するためには、検査者がマニュアルに従って正しく検査を行い、その結果を正確に解釈する必要がある。わが国でもADAS-COGの検査者は、研究によっては「資格認定試験」に合格することが義務づけられている。本講習会では、米国と同じ形式の試験問題を用いて資格認定を行う。なお、試験それ自体は平易であり、約95%の受験者が合格している。
この講習会は、10回目を迎えた。今年も第9回同様ADAS-COGの改訂新版を用いて講習を行うことにする。以前に旧版で本講習会を受講された方も、ぜひ、再度講習を受けていただきたい。改訂は、内容の変更だけではなく、前回のバージョンでは一体になっていた検査問題とマニュアルを分離し、判定基準を見直している。また、検査マニュアルはカラー化され、より見やすくなるように工夫されている。
ADAS-COG-Jの認定講習会を受講できるのは、医師、心理士(心理系大学学部卒業者)、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士とします。その他の職種では、認定心理士の受験資格を有する方を対象とします。(講習会参加者に資格制限を設けているのは、原著者の意向によるものです。その旨、どうぞご了承ください。なお、ご不明の点がございましたら、下記までお問い合わせください。
担当: いわき明星大学 林 洋一 メールアドレス:cnstest3006@gmail.com